お盆
世間はお盆に突入です。私の家はお寺に囲まれているのですが、普段朝は静かなものです。しかし今日は違いました。朝からお寺周辺はごった返していました。
きゅうりの馬となすの牛。お盆に付き物のこの二つ。以前このブログでは「精霊がきゅうりの馬に乗り、牛には荷物を乗せて楽に帰れるようにという意味が込められている」と紹介いたしましたが、いろんな説があり、「お墓から帰ってくる時は、おうちに早く帰れるようにきゅうりの馬で、帰りはなごりを惜しむようにゆっくりとなすの牛で帰る」という話をマンガで読みました。(3月のライオン:羽海野チカ)←素晴らしい作品です。はちみつとクローバーの作者ですね!
そんな中、今日、介護老人保健施設いっぷくの職員から文章が届きました。T.K
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お盆。そしてお墓参り。
世間では当たり前の風景、風習。しかし施設の中ではそれは叶わないことのほうが多いのが現状です。
Wさんは15年前にご主人を亡くし子にも恵まれずそれからずっと一人暮らしをしていました。
Wさんが私たちの施設に入所したのは2年前。お盆前に墓掃除に出かけその帰りに事故に遭い一人暮らしが困難になり入所されました。お歳は90歳を超えましたが、さすが気丈に一人で生活していただけあってマイペース+頑固なお方です。
施設ではいろいろと嗜好を凝らし行事を提供していますが、Wさん、それなりに楽しまれている中にも「ふん・・」とどこか冷めた表情を浮かべているような印象を私たちはなんとなく感じていました。今回、お墓参りをお誘いした時も私たちの自己満足にならなければ良いのだがと心配をしていたのが正直なところです。
お花の用意をして、お明かしに線香にお水にと準備をして・・・・。そしてお墓に向かう車の中で、Wさんの何気ないしぐさですがWさんが静かに興奮している様子が伝わってきました。
墓地に着き墓前を前に手を合わせたWさんは「ごめんなさい。ごめんなさい。」と何度もつぶやき涙を流されていました。2年越しのお墓参りにうれしさ以上のものがこみ上げて来たのでしょう。そばにいた私たちも胸が熱くなりました。
施設の行事・・・お楽しみ会やお出かけなど否定はしませんが「家庭的な雰囲気」、「当たり前の生活」と簡単に口にしている中で、大事な風習を継承していくことを施設が阻むことのないようにしていきたいと思わずにはいられませんでした。 T.A